Yoshikawa Mae from India 吉川めいのほぼ月イチ インド発見記
[02月]ウソ?!使用済み?中古??Jhutaとは
今月のインド発見記は、また一つ、インドにはあって日本にはない、
ある考え方と共にインド独自のボキャブラリーを紹介します。

長年インドに通い続けている私でも、実はこの言葉に巡り会わせたのは比較的最近で、昨夏のこと。
私がとってもお世話になっている、バンガロール在住のプジャーリ(インドでプージャの儀式を行う、
お坊さんのような方)の周りにいた時のことです。

私が大変お世話になっているプジャーリBさんは、プージャやハヴァンをはじめとしたヒンドゥ儀式を通して、
エネルギーを浄化したり、高めたりすることができる方。
彼は本物のプジャーリであるからこそ、これらのことを一つの儀式として、形だけ行うのではなく、サイエンスと言えるまで、
こと細かく霊的次元のノウハウがあり、エネルギーの世界を“整えて”味方につけることができる方なのです。
そんな彼は、このような儀式を行う際に物理的に使う道具や方法が様々あるのですが、
中でも「香り」を一つの大切な要素として扱っています。

私は、およそ2年前からプジャーリBさんと、彼の周りで活躍するチームの方たちととても仲良くなり、
今ではインドに行く度に家族のようにしてもらって、お家にも泊まらせていただいています。
困った時には相談にのってもらい、何度も助けてもらっていて、私にとって精神的なよりどころでもあります。
昨夏、私は日本に帰国する前に彼のところへ寄って、一つお願いごとをしました。

「Bさんがいつも儀式の時に使っていて、私のお清めの際にもたくさん使った特殊な香油。私はこの香りにすごく癒され、
パワーをもらうのですが、どうかこの香油を日本に持って帰って使えるよう、少しお裾分けしていただけませんか?」

Bさんは、私の率直なリクエストにとても喜んだ様子で対応してくださいました。
翌日、彼のアシスタントの一人である女性で、私の友人でもあるRが、大勢の方が集う新月の会の最中、
私のことを呼び出し、別のお部屋に連れて行ってくれました。

「めい、コレをみて。ここにBさんが買いそろえてストックしている香油があるから、
あなたが好きなものをここから選んで日本へ持って帰っていいって」

WOW!!インド国内で買えるものではなく、Bさんが特別に国外から仕入れている香油だと聞かされていたので、
とても光栄で、すごく嬉しいことでした。
何種類もの香りが揃う宝箱のようなケースを前に、私は興奮しながら一つひとつ手に取りました。
この時、ものが香油であるだけあって個々の小さな香油の裏にある名前を確認するのとほぼ同時に、
片手に取った香油を一つずつ自分の鼻に近づけ、香りを確かめようとしました。

「待って!それはやってはダメよ!」と、Rはとっさにストップをかけました。
え?!何かいけないことをしてしまったの?ちょっとビックリした私に、Rは優しく説明してくれました。
「インド人の私だって、実はBさんのもとで働くようになるまではちゃんと知らなかったのだけど、
それはJhuta(ジュータ)と言うのよ。なんて説明したらいいのかしら…」

説明に困る彼女を前に、私はその瞬間に思い出して言いました。
「わかった… それって、もしかして、神様に祭る祭壇のためのものを、神様に差し上げる前に、
人間が先に楽しんではならない、っていうことじゃない?Jhutaという言葉すら知らなかったけど、その概念は聞いたことがある」
「そうそう!そうなの。Jhutaって、ようするに“使用済み”という意味があるのだけど、
こういう香油は、そもそもプージャの儀式のために用意されたものだから、それをいただくにしたって、
一度嗅いだものを絶対に戻してはならないのよ」とRは話してくれました。

あー… 言われてみればごもっとも。
神様(霊的存在)を喜ばせるために、香りや炎、そして煙などを使うのは、
物質の中でもより“軽い”ものを活用することで、霊的世界に届きやすいからなのです。
そう言えば、プージャの儀式について勉強した中で、そんなことを学んだことがあったっけ。

「知りませんでした。ごめんなさい」と言いながら、香ったものについては責任をもって頂戴することにして、
今後粗相のないよう気を改めた瞬間でした。


Jhutaというこの言葉。
このように使用されるのは、儀式の中でもそれを形としてだけではなく、
その意味と効果を深く理解した上で行う者しか知らないことで、R自身が話してくれたように、
インド人であっても知らない人は多いようです。

通常のヒンディー語では、Jhutaとは「ウソ」を意味する言葉です。言葉って、時に複数の意味合いで使用されることがありますが、
この言葉に関しては、上記の意味に近いところでは、例えば「Yeh pani jhuta hai.」と言って、
このお水は(誰かが)既に飲んだものだよ、という意味で使用される言葉でもあります。

奥が深くて面白いインド文化。また一つ「めいはインド人よりインド人だね!」って、インド人に言われる学びが増えました!(笑)