Yoshikawa Mae from India 吉川めいのほぼ月イチ インド発見記
[05月]ナザール・ウタルナ
日本で邪気をはらうために玄関口に塩を置いたり、中国では魔除けのために唐辛子を使う文化があります。似たようなものなのですが、インドにはナザール・ウタルナというものがあります。

それは、悪い視線(=ナザール)から身を守るというもの。
妬みやうらやみなどの思いを含むネガティブな視線は、視線を送ったその人が悪い人でなくても、例え悪気がなくても害を侵すことがあると一般的に信じられています。視線は意識の方向を表すものなので、そこから悪いエネルギーが伝わるのです。ひどいケースでは、そんな悪いエネルギーが病や不幸をもたらすと信じられています。またナザールによって起こった病や不幸は、通常のものと違ってなかなか治らないと言うのです。

そんなマイナスエネルギーから大切なものを守るのがナザール・ウタルナ。本格的なものは占星学者などのプロフェッショナルの力を借りて活用するそうですが、日本で見る「塩」のように、一般的に利用されているナザール・ウタルナもたくさんあります。

一番よく見るのは、赤唐辛子とレモンのコンビネーション。どちらも辛さや酸味で「よける」という感じはしますね。このように4−5つの唐辛子とレモンを糸でつないで、人の目を誘うような高価なもの、大切なものに下げます。ナザール・ウタルナをかける時には同時にマントラも唱えてより一層パワーを持たせるそう。


これは以前のブログにも登場している私の友人のテーラーさんのお店の入り口扉。日本人の女の子に教えてもらった鶴も一緒にぶら下げているのがとてもキュート。唐辛子とレモンの組み合わせのナザール・ウタルナは、週に一度金曜日に取り替えているらしいです。

取り替え時、使用済みのナザール・ウタルナは捨てられるのですが、時々道端に投げられていることも。そんな時、インド人は必ず古いナザール・ウタルナをよけて歩きます。上をまたいで歩いてしまうと悪いエネルギーを吸ってしまうかも、と恐れるそう。

お店などのビジネス(繁栄の場所)以外にも、ナザールは健康な家畜動物や豊富な作物、すてきなお家を影響するといいます。村人やその家畜をナザールから守るために村境には特別な文字を彫った石板などが置かれていたりします。

また、家を守るためにはブタラジャというお面がよく使われます。


マイソールで私が通うグルジのスクールがあるゴクラムという地区は、とても裕福な住宅街なので、ブタラジャはほとんどすべてのお家にかかっています。


すべての形のナザール・ウタルナは特に「最初の一目」から大切なものを守るためにあるそうです。ナザール(悪い視線)は最初の一目のみが致命的な影響を持つと言われ、ナザール・ウタルナはこの最初の一目の視線をキャッチするのが役割なのです。その一目さえキャッチすれば、その後続く視線の影響は和らげられるそう。


ナザール・ウタルナの黒い点をつけた小さな赤ちゃん。マイソールのデバラジマーケットにて。ちょっぴり光っている鼻水はナザール・ウタルナじゃないよ(笑)

これは、人間がナザール・ウタルナを付けている例。
小さな赤ちゃん、美しい少年少女、花嫁や花婿などがナザールの視線を浴びる危険性が高いと信じられています。特に小さな子供は神さま同様大切にされるので、インドではナザール・ウタルナを付けていない赤ちゃんはほとんど見たことがありません。

人間に付けるナザール・ウタルナで一番よくあるのは黒い点。アイライナーのようなカジャールという黒いものでおでこにカラ・ティカという点を付け、頬にもよく黒い点を付けます。完全なものや真なる美しさを持つものにわざと黒点をぬることがネガティブなエネルギーから身を守ることになるらしい。完全なものにわざと黒い点を付けるなんて、表面よりスピリチュアルなものに焦点を合わせる傾向があるインド文化ならではの習慣だと思います。