Yoshikawa Mae from India 吉川めいのほぼ月イチ インド発見記
[12月]【最終回】その日暮らしはナウいかも。
2008年の9月に開始したこのウェブ連載も今回でラスト回を迎えます。
仲良くさせていただいている雑誌ヨギーニの編集長Hさんからウェブ連載の相談を受け、
「インドがテーマならネタ切れしないと思う」と私が言ったことがきっかけに始まった
『吉川めいのほぼ月1インド発見記』。
「密かにファンです!」と、ヨガクラスやイベントの際にお声がけいただくこともあり、大変嬉しく思います。

みなさん、長年のご愛読本当にありがとうございました。
さて、最終回となる今回も、私の心に近いインドネタをお届けしたいと思います。
題して:その日暮らしはナウいかも。(笑)



みなさん知っていますか、一昔前の流行語で、「カッコイイ」みたいな意味で使われる日本語となった「ナウい」。
実はこの言葉、英語の「NOW(=今)」からきているのだそうです。
今風だから、ナウい(NOWい)。

私はインドで暮らしている時に、ふとこの表現を思い出すことがあります。
流行とは別の次元で、インドの人々はこの「ナウい」という言葉に、まったく新しい意味を与えると思うのです。
今年のインド滞在期間中にあった出来事の実話から、お話してみましょう。



実話その�
私にとって、最も親しいローカルの友人の一人であり、テーラーさんをやっている、Lさん。
11月だったかでしょうか。とても忙しい時期だったのに、
彼が珍しく高熱を出し、3日間も店に出られずにダウンしていました。

その間、奥さんのSさんはお店の当番をしていましたが、
3日後に店に戻ってきたLさんに、いきなり言われました。

「僕がたったの3日間店に出なかっただけで、まったくお金がないじゃないか。ゼロ!」
「あなたがいないんだから、商品が出来上がらない。当然入金もないわ」
すかさず奥さんは返しました。

それが、彼らはこんなような会話を、決して嫌な感じではなく、笑いながらおかし話みたいに、
私の前で交わしているのです。


実話その�
私がヨガの練習時間中にベビーシッターさんとして雇っているローカルのインド人女性Rさん。
毎週、週末がやってくると、一週間分の料金を計算して支払っています。

ある朝私が練習帰りに帰宅すると、彼女はこう言いました。

「すみません、マダム。今日はまだ火曜日ですが、あなたさえ良ければ今週分の料金を今日支払っていただけないかしら?実は私、今日買いたい物があるんです。そして娘の学校への支払いも今日しなければならないものがあって」

どちらも日本の感覚からしてみると、考えられないようなお話です。

「え?今日買いたい物があって、そのためのお金がない?娘の教育のための蓄えがない??」
きっと日本人だったら呆気にとられてそんな風に思うのではないでしょうか。

日本は世界的に見ても最も貯金が多い国の一つとして有名ですので、
私達の社会からしてみると信じ難いほどの「その日暮らし」でしょう。

今日しか見ていない。
今日が幸せならいい。
きっとその裏には、今日どうにかならなかったら、明日はどうにかなるだろう、
という思いも隠れているのではないかと思います。


日本人からしてみたら、こんな状況、単純に「マネできない」「マネしたくない」で済まされてしまうかもしれませんが、
今日はもう少し詳しく、そんなその日暮らしのインド人の心の中まで覗いてみましょうか。
なぜなら、彼らはハッピーな様子で、このような会話をしていたのですから。
そこには、決して私達が想定するような苦しみや心配は映し出されていなかったのです。

「過去に生きる者は後悔を重ねる
未来に生きる者は不安を覚える
今を生きる者は、喜びを知る。」

こんな言葉を聞いたことがありますか?
そう思うと、いつも「蓄えが十分かしら?」と心配している人が、いかにい未来にばかり向いているかがわかります。
また日本という国は貯金が多い国ですから、未来に対する不安感を抱えながら生きている人が多いのではないかと、
ふと私は感じました。

ここで私が問いたいことは、「どちらの方がより多くの恐れを持って生きているか?」ということです。
不思議と恐れや心配の重みは、必ずしもお金や物質の少なさと比重していないことがわかります。

ヨガ練習生であれば「今を生きる」とか「意識を今、ここに合わせる」ということを
聞いたり実践しようとしたりしている方が多いと思います。
私も雑誌YOGINIの連載で、よくこのようなことについて綴ってきましたが、
「今を生きること」とは、ヨガマットの上で意識を合わせることだけを指しているのではないと思うのです。
そう考えると「その日暮らし」って、もしかしたらそう悪くないのでは… なんて、思うことがあるのです。(笑)





2013年もいよいよあと数日。
みなさん、今年も大変お疲れ様でした!

カレンダーが変わっても、変わらず一日いちにちの流れは続いていきますが、
みなさんにとって2014年の毎日も、いつもナウい、「今」に在る意識のもとで、
喜び溢れる日々でありますように。心からお祈り申し上げます。




これでこのウェブ連載は閉幕となりますが、私のオフィシャルサイトmaeyoga.comでは
いつもYOGAライフスタイルや様々なYOGA的視点をシェアしています。
また、2014年からはmaeyogaから発信する新メンバーシップ・コミュニティ企画『MVM』も始まります。
今発売中の雑誌YOGINIでは10年間書き続けた連載エッセイの最終回が掲載されていますが、
MVMでは続編も発行していく予定ですので、こちらも楽しみにしていてくださいね。

Please keep in touch!
たくさんの愛と感謝を、
吉川めい